「え? もうこんな時間たってたの?」
これは、僕が仕事やプライベートで用事をしているときに、しょっちゅう感じることです。
僕は40歳を過ぎてから、ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の傾向があることを知りました。
それまでの人生、なんとなく「人より上手くできないな」と思うことは多かったんですが、結構深刻だと思ったのが時間の使い方。
日常的に「気が付いたら何時間もたっていた」とか、「この作業、30分くらいで終わると思ったのに、なんで半日かかってるんだ?」みたいなことがしょっちゅうでした。
今では、自分が発達障害であることが自覚できているので、それゆえの時間感覚のなさをカバーするためのタイムマネジメント方法を実践し、何とか日々を乗り切っています
今回の記事では、発達障害(ADHD)の特性を持っている人が、なぜ時間感覚がないのか? 改善するためのタイムマネジメント方法を紹介したいと思います。
・発達障害(ADHD)の人は、「時間感覚」がない? その理由
・「時間感覚のなさ」をカバーするための、タイムマネジメント方法
発達障害(ADHD)の人は、「時間感覚」がない? その理由
発達障害(ADHD)の特性をもつ人には「時間の流れを体感する力」=「時間知覚が弱い」という特徴がよく見られるそうです。
たとえば──
- 「あと5分」のつもりが、20分経っている
- 「1時間で終わる仕事」が、3時間かかっても終わらない
- 締切までの残り時間を体感で把握できない
- 気が散って違うことを始めてしまい、結果ダラダラと時間を浪費
これは、発達障害(ADHD)の人は脳の情報処理の仕方のクセに関係していると言われています。
時間感覚をバグらせる 発達障害(ADHD)の人の脳の情報処理の仕方のクセ
①「今」に意識が集中しすぎる
②「時間を感じる力(時間知覚)」が弱い
③ワーキングメモリ(作業記憶)が弱い
① 「今」に意識が集中しすぎる
発達障害(ADHD)の人は、目の前のことに強く引き込まれやすいという特性があります。
たとえば──
・作業中に「ちょっとメールチェックしよう」と思ったら、そこから1時間経ってた
・気になる言葉をネットで調べてたら、関連情報を深掘りしすぎて止まらない
・資料を作ってる途中で「ここのフォントの色、変えたほうがいいかな?」と悩みすぎる
こういった経験、僕にもメチャ当てはまります。
気づいたら、本来のやるべきタスクを見失って、どうでもいいことに「脱線」してるんですよね。
その結果、「やってるつもり」なのに、「予定通り進んでない」ということが起こります。
② 「時間を感じる力(時間知覚)」が弱い
ADHDの人は、「あと5分」「残り30分」などの時間の長さを体感する力=時間知覚が弱い傾向があるとされています。
これは、「今は10時だから、次の予定まであと15分だな」と頭の中で理屈で理解はできても、感覚としてつかめないという状態です。
そのため…
-
時間に追われてる感覚がないまま、のんびりやってしまう
-
気づいたら締切目前になって、パニック
-
残り時間に対して、タスクが多すぎるのに気づくのが遅れる
この「感覚のズレ」が積み重なると、場当たり的に仕事をするように見え、計画倒れが当たり前のようになってしまいます。
僕もよく、「この作業は30分くらいかな」と見積もって始めたのに、細かいところにハマって結果3時間経ってた、ということがよくあります。

しかも、「長い時間かけたわりに、結局全体の進捗はあまり進んでない…」というクオリティの低い状態になり、周りから失笑されるという・・・・・・。
もうね、絶望感と無力感でいっぱいですよ。
これが本当にしんどいんですよね。
③ ワーキングメモリ(作業記憶)が弱い
発達障害の特性のある人は、「ワーキングメモリ=短期間に複数の情報を同時に扱う力」が弱いとされています。



このワーキングメモリがうまく働かないと──
・「今どのくらい時間が経ってるか」
・「あと何分で予定が始まるか」
・「作業が今どこまで進んでるか」
こういった時間に関する情報を「頭の中に置いておく」のが難しくなるんです。
その結果、「時間が過ぎるのを忘れる」「途中でやるべきことを忘れる」ということが起きやすくなります。
ゆーさくの「時間感覚」に関しての困りごと
意外にも遅刻はしない だが……
上記した特徴の影響で、発達障害(ADHD)の特性を持つ人は、「時間ギリギリ行動」「遅刻」がクセになってる人も多いと聞きます。
ですが、僕はその逆。
実は、僕は遅刻魔ではありません。
会社への出勤も待ち合わせにも・・・・・・。
遅れることはほぼなく、むしろ早く着きすぎるタイプなんです。
たとえば、友人との飲み会で、都内で待ち合わせをするとします
家から都内まで電車で1時間ちょっとなんですが、僕はいつも1時間半~2時間くらい前に家を出ます。
理由は、色々なトラブルがあった場合に、慌てたくないからです
- 「途中でトイレ行きたくなったらどうしよう」
- 「待ち合わせ場所が分かりにくかったら困るし」
- 「乗り換えミスったらやばいな」
この心配性のおかげで、待ち合わせに遅れたりしたことが、僕はほとんどありません
(交通状況や電車の遅延で、大幅に遅れてしまった・・・という不可抗力の場合は除く)
会社の朝の出勤も同様です。
誰よりも早く会社に出社しています。
でもこれ、よくよく考えると毎日30分以上の余分な時間を、使ってることになるんですよね。
不安だから早めに出る
↓
余裕を見すぎて、30分以上前に到着してしまう
↓
でも、そのぶん時間が他のことが削られて、しわ寄せがくる
「人よりも余計に時間を使わなければいけない」自分に対し、ものすごいイヤになるし悩んでいたりもします。



仕事上での時間の見積もりが甘すぎる
そして、本当に困っているのが、仕事での時間の見積もりです。
あるとき、仕事の手順を記した書類作成を上司から頼まれ、担当することになりました
僕は「1日もあればなんとか」と言って引き受けたんです。
でも、いざ取りかかってみたら、やり方がよくわからなくて、悶々としました。
それに、「この見出し、もっとかっこよくできる気がする」とか、「この1文、ちょっと語尾を変えたい」とか、細かい些末な部分にめちゃくちゃ時間をかけてしまいました
気づいたら、3日目になっても半分も終わってない。
当然、上司からは
- 「なんであんな時間があったのに終わってないの?」
- 「そんなに時間かかってるなら、もっとちゃんと相談しろよ!」
ガチでお説教されました。
そのとき本気で思いました。



ほどなくして、僕は自分に発達障害(ADHD)の傾向があることが分かり、諸々の「時間感覚」の困りごとも、なんとなく原因が分かり、腹落ちしました。
発達障害(ADHD)の人は
- 「時計を見る」
- 「時間を見積もる」
- 「計画を立てる」
これ自体に、困難を感じやすい脳の仕組みを持っているのです。
これは、単に「だらしない」「能力が低い」というわけでもないんですよね。
「時間感覚のズレ」が目立たないように、自分でも対策する姿勢は必要
「自分は発達障害(ADHD)の傾向があるから、時間感覚がズレているのは仕方がない
だから、仕事に支障が出たって一向に構わないのさ!(キリッ)」
残念ながら、こういう考えは許されるわけがないと僕は思っています。
発達障害を持つ人は、確かに「苦手なことや、めちゃくちゃ頑張ってもできないことが多いです。
周囲の理解や配慮、ある程度のサポートが必要なこともあります。
だけれども、「だから自分では何もしなくてもいい」という考え方は間違えています。
自分でもできる工夫はして、発達障害が目立たないように対策する。
そして、社会や所属している組織に、自分のできることで貢献していく。
この姿勢は絶対に大事です。
「発達障害者への配慮」
これは「周りからしてもらうもではなく、勝ち取るもの」です。


発達障害(ADHD)の僕が、「時間感覚のズレ」を改善するために取り入れた3つの工夫
それでは、僕が色々と実践して、「これはいいかも!」と思えた「時間感覚のズレ」を改善するためのライフハックを3つ紹介します。
実際に取り入れてみて、仕事でも生活でも明らかに変化が出てきました。
① ポモドーロ・テクニックで集中力を管理
ポモドーロ・テクニックとは、「25分作業→5分休憩」を1セットとして、集中力のメリハリをつける時間管理術です。
その語の由来は、昔イタリアの忙しい主婦が、料理を作るときに使っていたタイマーが、トマトの形をしていたことに由来するそうです
(イタリア語でトマトはPomodoroというそうです)
この25分っていう時間、人間の集中力が持続する時間らしく、集中力が切れるころに小休止を挟むことで、メリハリがついて、長い時間集中力が持続するという理屈です
このサイクルで仕事をすることで、集中力に難ありの僕でも、明らかに集中力が長く持続するようになりました。
ポモドーロテクニックを応用した、Youtubeの作業動画があります
落ち着いたBGMを流しながら、「25分作業したら5分休憩」というサイクルを繰り返してくれます。
② 視覚的にわかるタイマーを使う
発達障害(ADHD)の人は、自分の感覚の数値や文字情報よりも「目で見てわかる情報」のほうが理解しやすいです。
「Time Timer(タイムタイマー)」という視覚タイマーがおすすめです。


これは、残り時間が円で表示されて、「どれくらい時間が残ってるか」が一目で視覚的にわかるようになっています。
「あとどれくらいあるんだろう?」と時計を何度も見ることがなくなり、視覚的に残り時間が分かるので、集中力がグッと上がります。
勉強や仕事だけでなく、あらゆる日常(食事・支度等)のタスクタイマーとして時間を管理することができます。
③ タスク管理ツールでやることを「見える化」
仕事の時、頭の中で「これとこれをやって…」とざっくりと組み立てたりすると思うんですが・・・・・・
これは発達障害の人は特にやめたほうがいい。
「頭の中で考えたことを、覚えておくこと」に脳のリソースが割かれてしまうと、それだけで負荷がかかりパフォーマンスが下落しやすいからです。
それに、やるべきこと全体像や優先順なども、頭の外に書き出さないと訳が分からなくなりがちです。
- 「全体像はどうだったか」
- 「どこから仕事にとりかかったほうがいいのか?」
これがわからなくなり、優先順位を間違え、変な方向性に仕事が進んでしまうことにもなりかねません。
なので、抱えている仕事をすべて頭の外に出して見える化し、そのタスクを細分化してみることをお勧めします。
そして、時間ごとにやるべきことを書いて明確にする。
NotionやTodoistといったアプリを使って、タスクを書き出して細かく分解→順番に実行するようにしました。
結果、仕事がすっきり見える化され、作業のハードルが下がってスムーズに仕事ができるようになった感覚があります。
特にNotionは、文章やチェックリストを柔軟に組めるので、仕事の進行管理にも使えて便利です。
https://www.notion.com/ja/desktop
こういったツールを使うようになってから、僕自身の時間の感覚がちょっとずつ変わってきました。
- 作業ごとの「時間のかかり方」がなんとなく予測できるようになった
- 集中が切れるタイミングで、強制的にリフレッシュできる
- 1日を「25分+5分」のセット何回分に分けて考えられるようになった
- 一つの作業に、気づいたら時間をかけ過ぎることがなくなった
以前は、
- 「今日、何をやって、どれくらい進んだのか」
- 「どれくらいの時間、それをやっていたのか」
うまく把握できなかったんですが・・・・・・。
今は、「ポモドーロ何セット分やったか?」でざっくり管理&把握できるようになりました。
まとめ:発達障害(ADHD)の人は、「時間感覚がない」
まとめ
・発達障害(ADHD)の人は、「時間間隔」がない? その理由
① 「今」に意識が集中しすぎる
② 「時間を感じる力(時間知覚)」が弱い
③ ワーキングメモリ(作業記憶)が弱い
・発達障害(ADHD)の人が、「時間感覚のズレ」を改善するための3つの工夫
①ポモドーロテクニックで集中力を管理
②視覚的にわかるタイマーを使う
③タスク管理ツールでやることを「見える化」
ADHDによる特性は、僕にとって長年の悩みの種でした。
特に「時間管理」に関しては、ずっと振り回されっぱなしでして……。
でも、ポモドーロ・テクニック、視覚タイマー、タスク管理アプリといったツールや仕組みに頼ることで、
「時間に振り回される生活」から、「時間をコントロールする生活」へと少しずつ移行できています。
僕と同じように「時間がうまく使えない」と感じている方へ。
それはあなたのせいじゃなくて、脳のクセに合った方法がまだ見つかっていないだけかもしれません。
この記事が、そんなヒントのひとつになれば嬉しいです。
~おわり~
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